北京の話よりもっと前の話です。
私が中国に行った初めてのことです。
どの筋から紹介されたのか失念しましたが、香港の大手デパートである「永安百貨」の社長からの話で彼の故郷上海で、外国人専用マンション開発をしたいが共同出資をしないかとの話があり、出かけることになった。
香港・上海直行便が開業したのもこの頃でした。
帰りの便が決まっていないと往復の切符が買えないというので、ヘンだなと思いつつも予定がはっきりしていなかったので片道切符で出かけることになった
。飛行機はターミナルビルからもっとも離れたところに駐機していた。
その頃、中国の航空会社の乗組員はターミナルビルに入ることを制限され、飛行機はトンボ帰りの便しかなかったので、パイロット以下乗組員が飛行機の周りをうろうろしていた。
ボタンをはだけただらしない格好のパイロット(制服の腕章線の多さからそれと分かる)を見ると大丈夫かいなと不安になった。
多少揺れたものの定刻に無事上海に着いた。上海では社長が手配してくれた人が待っており、車も用意されて上々の旅となった。現場を見て、現地の建設業者との打合せなど極めてスムーズに進み、中国も悪くないと思うようになった。
夜には上海雑技団のショーを見て楽しんだりした。
ただ、食事時間が決まっておりそれを過ぎると、全てのレストランが閉まってしまうという不便なところでもありました。
ショーを見た後、8時半ごろホテルに戻ったらなにも食べるものが無く。
ホテル内の小さなキヨスクで輸入品の目ん玉が飛び出るほど高いカップラーメンを買って部屋でぬるいお湯でラーメンを啜ったのでした。
問題が起きたのは仕事も終って香港に戻ることになった時でした。
中国民航とキャセイの2つの航空会社が運行していたので、帰りはキャセイが良かろうとキャセイの事務所に行って予約をしたところ、チケットはあるかといわれ「無い」と答えたところ「チケットが無いと予約が出来ない。
こちらでは発券業務が出来ず、中国民航の事務所しか発券出来ないのでそちらに行ってくれ」とのことで中国民航の事務所は行った。
ここで発券を頼むと予約をしているかと訊ねられ「無い」というと「予約が無ければ発券できない」となって真っ青。
どうすりゃいいの。「中国民航ならば予約できるのか」「1週間満席でそれ以降ならば取れる」わおー帰れない。
ホテルは満室で延泊は出来ない。絶対絶命。
とんでもない国に来たもんだ。
案内してくれた人にどうすれば良いのかと相談したところ、調べるからホテルで待つようにとのこと。
夜になって連絡が入り、翌朝出来るだけ早い時間に飛行場に行き、通関を済ましてから発券カウンターに行って予約してあるはずだと言い張れとのこと。
確か朝9時ごろの便であったが空港には5時半に到着、普通は通関前に発券を受けチェックインカウンターで搭乗券をもらうのだが、そこでは税関が先にあってその奥にチェックインカウンターがある。
発券場所は奥の隅にひっそりとあった。必死の形相だと思うが自分では分からない。「予約してあるので発券して欲しい」「そんな名前は予約表にない」「そんな馬鹿なはずは無い。絶対に予約した」と言い張ってその場を動かず頑張った。
30分ほどして目の前にあった小さな金庫(20cmx30cm位)がチーンと音をして開き、中のぎっしりと詰まった航空券を見たときはこれで帰れるとほっとしてへたり込むところであった。
それ以来中国へ行きたくない国の筆頭になってしまった。
マンションプロジェクトは当然のことながらボツにしてしまいました。
もし、この時より10年後にこの話があれば良い話だったと思います。
07.06.26 泰介
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